事業モデル
株式会社ダイブは2002年創業で、観光施設に特化した人材サービス「リゾートバイト」を基幹事業とする。ビジネスモデルの核心は、都市部の若者・シニア・外国人労働者と、北海道から沖縄まで全国の宿泊施設・温泉旅館・スキー場・テーマパーク等の観光施設をマッチングする人材派遣業(観光HR事業)であり、FY2025売上の約94%を占める。
売上の98%が労働者派遣業による「スプレッド収益(派遣料金と人件費の差額)」モデルで、残り2%が有料職業紹介手数料収入となる。第二の柱は地方創生事業で、非観光地の遊休公共施設・廃屋等を活用してグランピング施設「ザランタン」や滞在型アウトドアホテル「クラフトホテル」を全国8ヶ所以上で運営し、FY2025売上の約6%を占める。
観光HR事業と地方創生事業は相互補完関係にあり、グランピング施設のスタッフ採用を観光HR事業が担い、施設集客は自社運営グランピング専門メディア「GLAMPICKS(年間302万UU、掲載施設467施設)」でD2Cを実現、広告宣伝費率を売上の2.7%に抑えている。従業員数は約159名(FY2025時点)と小規模ながら、IT化・基幹システム・LINEを活用した高度な業務効率化によりスケーラブルな運営を実現している。
KPI
観光HR事業の主要KPIは年間就業者数(スタッフ派遣・紹介件数)であり、2025年6月期には過去最高を更新した。取引施設数は47都道府県に広がり、当期も増加基調にある。
財務KPIとしては、FY2025売上高138億円(前年比+11.5%)、営業利益7.56億円(前年比+39.4%)、営業利益率5.49%(前年4.39%から改善)、ROE20.01%、ROA10.24%、自己資本比率51.2%(有利子負債比率17.91%まで低下)が挙げられ、いずれも改善傾向にある。FY2026通期会社予想は売上160億円・営業利益8億円で、FY2026第3四半期累計時点(2025年7月〜2026年3月)で経常利益7.68億円と通期計画比96.4%の高進捗率を達成し、売上・利益ともに過去最高を更新中である。
地方創生事業では施設数・稼働率・宿泊単価(1泊2食付き大人1人1.3万円前後)が管理指標となる。広告宣伝費の最適化(1,300万円削減)を行いながら増収増益を維持していることも重要な効率性指標である。
成長ドライバー
最大の成長ドライバーは、訪日外国人旅行者の急増(2024年度3,600万人突破・政府目標2030年6,000万人)と宿泊需要拡大を背景とした観光施設の慢性的かつ深刻な人手不足(2024年9月時点で旅館・ホテルの72.7%が人手不足)であり、リゾートバイト需要の構造的拡大が続いている。第二に、ターゲット人材の多様化による供給拡大がある。
従来の若者層に加え、シニア層・外国人(2026年3月に三幸グループと留学生就職支援の業務提携、2026年4月に観光庁「廃屋撤去・再生支援事業」事務局採択、宿泊業特定技能外国人支援加速)を積極的に取り込み、就業者数拡大を図っている。第三に、スポットBPO(業務プロセスアウトソーシング)領域への拡張があり、苗場プリンスホテルへの冬季300名採用一括請負が成立するなど、単なる人材紹介から業務受託へのサービス進化が始まっている。
第四に、地方創生事業の施設数拡大と観光庁支援による廃屋・遊休施設の再活性化の取り組みが、地方公共団体からの案件増加につながっている。加えて、2026年4月からのんさんをブランドアンバサダーに起用し、認知度向上を図ることで求職者集客を強化している。
リスク
最大のリスクは観光業・宿泊業の景気変動リスクであり、新型コロナウイルス感染症のような感染症流行、自然災害、国際的な地政学的緊張、為替変動による訪日外国人数の急減が発生した場合、顧客施設の稼働率低下と人材需要急減が連動して直撃する。FY2021(コロナ禍)は売上27.6億円まで激減した実績があり、景気耐性の低さが数字で証明されている。
第二のリスクは法規制リスクで、労働者派遣法の改正(派遣期間制限、同一労働同一賃金規制強化、特定技能外国人関連法令など)が収益モデルに直接影響する。第三に、競合リスクとして、総合人材派遣大手(フルキャスト、ランスタッド等)の観光特化参入や、スキマバイト・スポットワークプラットフォーム(タイミー等)が観光業向け展開を強化する可能性がある。
第四に、特定業種・地域集中リスクとして、観光HR事業が売上の94%を占めることで業種固有リスクが高く、主要顧客である地方圏観光施設の廃業・統廃合が進む可能性もある。また、地方創生事業では冬季休業や自然災害の影響で施設稼働率が不安定になるリスクと、初期投資を伴う施設展開での資金需要増大リスクがある。
競合
観光HR事業における主な競合は、大手総合人材派遣・紹介会社(フルキャストホールディングス4848、リクルートスタッフィング等)が観光業向け派遣を展開するケースであるが、「リゾートバイト」という体験価値特化の特化型ブランドと長年蓄積したデータベース(現地の住環境・体験談等インターネット未公開情報)が高い参入障壁となっている。会社四季報でのライバル比較では、フルキャストホールディングス(時価総額539億円、営業利益率10.2%)と比較するとスケールは小さいが、PSR0.35倍と割安で成長性は高い。また、観光業DX・SaaS領域では自社開発した観光業界特化型SaaS「ハッサク(導入施設数171施設:2026年1月時点)」を展開しており、顧客施設への業務支援・囲い込みで差別化している。
地方創生事業においては、グランピング市場での競合は多数存在するが、公共施設活用・非観光地特化・D2C集客(GLAMPICKS)・観光HR事業からのスタッフ供給という4点のコスト優位性により、1泊1.3万円台という低価格帯での収益化を実現し、高価格帯の施設と市場を棲み分けている。時価総額49億円、PER9倍前後は成長率(売上CAGR約24%)対比で割安な水準にある。
バリュエーション
2026年5月14日時点の株価576円、時価総額約49億円。会社予想FY2026のEPS64.29円に対しPER約8.96倍、PBR1.79倍(BPS320.99円)、ROE予想20.03%という指標は、成長企業としては低い評価水準にある。売上高CAGRはFY2022〜FY2026予で約24%、営業利益CAGRは約88%と高成長であり、PEGレシオは0.3倍程度と極めて低い(一般的に1倍未満は割安)。
FY2026第3四半期時点の経常利益進捗率96.4%は通期目標の達成確度が非常に高く、実態ベースでのEPSはさらに上振れる可能性もある。財務健全性は自己資本比率54.4%、有利子負債4.07億円(有利子負債比率17.91%)と安定しており、現金等保有高は約20.7億円と時価総額の約42%に相当するネットキャッシュリッチな状態にある。懸念点は無配・自社株買い中心の株主還元方針、グロース市場小型株特有の流動性の低さ(1日平均出来高は数万株水準)、単一業種・単一事業への収益依存度の高さである。
現状のPBR1.79倍・PER9倍は、ROE20%の成長企業としては明らかに割安であり、インバウンド旺盛・人手不足継続という構造的追い風が続く限り、再評価の余地が大きい。