事業モデル
グリーンモンスター株式会社は「おかねに対する意識と行動を変える」をミッションとし、主に3つの事業を展開している。コア事業の「体験型投資学習事業」では、FXデモトレードアプリ「FXなび」、マネープランシミュレーションアプリ「トウシカ」、株式投資デモトレードアプリ「株たす」の3本の主力スマートフォンアプリを開発・運営しており、いずれもユーザーへは無料で提供している。収益モデルはアフィリエイト広告型で、ユーザーがアプリを通じて証券会社やFX会社の口座開設を行った際に成功報酬(アフィリエイト報酬)をASPを介して受領するスキームである。
第2の柱「資産形成支援事業」では、子会社・ファイナンシャルインテリジェンスが投資スクール「投資の学校プレミアム」を運営し(累計メルマガ受講者15万人以上)、月額・有料講座・セミナーを通じた収益を得ている。第3として子会社・FPコンサルティングが法人・組合・個人向けにファイナンシャルプランニングサービスを提供しており、顧問契約・セミナー収益が発生している。2026年6月期にはブロックチェーン・インフラストラクチャー(BI)事業への参入を宣言し、香港に子会社を設立するなど新事業への投資フェーズに移行している。
また、2026年2月には投資スクール事業「Financial Free College」を事業譲受して子会社化するなど、M&Aを通じたグループ拡大も進めている。全体として、投資未経験者に体験型学習でリーチし、口座開設という行動変容を促してアフィリエイト収益を得るB2Cメディア事業が主軸である。
KPI
体験型投資学習事業における最重要KPIは、各アプリの月次アクティブユーザー数(MAU)と証券会社・FX会社への口座開設送客件数(コンバージョン数)である。アフィリエイト報酬単価はASPおよび広告主との協議により決まるため、EPC(広告1クリックあたりの収益)と口座開設率の維持・向上も重要な指標となる。2026年6月期3Q累計(2025年7月〜2026年3月)の売上高は14.5億円(前年同期比3.0%増)と増収を維持したが、新規事業投資コスト増加により営業損失1.1億円(前年同期は7,100万円の利益)に転落した。
財務面では直近3月末時点の総資産が20.5億円(前期末比12.6%増)と拡大、自己資本比率は62.9%と健全水準を維持している一方、有利子負債が3億円増加している。配当は年間10円を継続(配当性向は2025/6期実績で96.4%と非常に高く、実質的な利益の大半を配当に充当している)。売上原価率は64.6%(2025/6期)まで低下してきており、中長期的な粗利率改善傾向が見られたが、販管費率が29.2%まで上昇したため営業利益率は6.2%に低下した。
アプリ事業においてはFXなびの主要広告主であるGMOフィナンシャルホールディングスグループが連結売上高の過半を占める集中リスクが存在する。資産形成支援事業では投資スクール受講者数と有料転換率が収益を規定する重要指標である。
成長ドライバー
第一の成長ドライバーは、新NISAの普及を背景とした国内投資家デビュー人口の拡大である。2024年1月のNISA制度大改正以降、投資未経験者の口座開設需要が急増しており、「トウシカ」のような積立NISA・iDeCoシミュレーションアプリへのニーズが高まっている。第二は「株たす」の成長で、株式投資デモトレード機能とキャンペーン施策が奏功し、2Q・3Qの業績回復に貢献した。会社は「株たす」のキャンペーン企画が好調であったと開示しており、口座開設誘導の優良チャネルとして期待される。
第三として、M&A・事業譲受による事業拡大がある。2026年2月の「Financial Free College」譲受により投資スクール事業が拡充され、月額・有料講座の安定収益層が厚みを増している。第四はブロックチェーン・インフラストラクチャー(BI)事業への参入であり、香港子会社を設立しWeb3関連の新市場を開拓する方針である。現時点では費用先行で業績への負担となっているが、中長期の新規収益源として期待されている。
第五に、FPコンサルティングを通じた法人・組合向け金融教育ニーズの取込みがあり、企業の「ファイナンシャルウェルビーイング」施策への需要増を背景に、法人営業の拡大余地が大きい。収益多様化と事業領域の拡大により、アフィリエイト単一依存からの脱却を図っている。
リスク
最大のリスクは特定広告主への売上集中である。「FXなび」にかかる売上高の主要部分がGMOフィナンシャルホールディングスグループのFX会社向けアフィリエイトに依存しており、同社が広告予算を削減・停止した場合に経営成績が大きく影響を受ける。実際に過去(2022年度)にはある証券会社の組織再編に伴うプロモーション停止で売上高に影響が出た事例がある。
第二のリスクはApple・Googleのプラットフォーム規制変更で、iOS14.5のATT(App Tracking Transparency)等のプライバシー規制強化がユーザー獲得広告の効率を低下させる可能性がある。過去にもこの影響を受けた実績があり、発生可能性は「中」・影響度は「大」と社内評価されている。第三はFX・株式市場の環境変化で、相場低迷期や投資熱が冷える局面ではユーザーの口座開設意欲が低下し、アフィリエイト収益が減少するリスクがある。
第四は新事業(ブロックチェーン・BI事業)の立ち上げコストによる短期的な収益悪化リスクで、費用の発生時期・規模が現時点では算定困難として通期業績予想が未開示となっている。第五は人材・組織体制リスクで、2025/6期以降の特別損失計上(2025年7月と11月に2度の業績修正)や販管費の急増が示すように、組織拡大に伴うコスト管理が課題となっている。
競合
体験型投資学習アプリ市場において、グリーンモンスターは現時点では直接的な競合が少ないと自社評価しているが、中長期的には複数の競争圧力に直面している。既存の競合環境では、証券会社自身が提供するデモトレード機能付きアプリ(各社の公式アプリ)、YouTubeや無料ブログ等の投資系コンテンツメディア、SBI証券・楽天証券等の大手ネット証券のオウンドメディアが潜在的な代替手段となっている。ただし、当社の強みは「デモトレードによる体験学習」という入口設計と、アプリを通じた口座開設誘導という広告主にとっての費用対効果の高さにある。
上場会見においても、アクティブユーザーへの送客品質の高さ(投資に積極的な顧客層の送客)が差別化点として強調された。資産形成支援事業(投資スクール)の競合は、フィデリティ証券や各証券会社のオンラインセミナー、YouTube上の投資教育チャンネル等が挙げられる。FPサービスにおいては独立系FP会社として中立性を売りにしており、保険代理店と兼業している競合FP会社との差別化を図っている。
ブロックチェーン事業領域ではWeb3スタートアップとの競合が想定されるが、現時点では事業立ち上げ段階であり競合ポジションは未確定である。市場全体としてはNISA普及による金融リテラシー向上ニーズの高まりが追い風となっており、パイ自体の成長フェーズにある。
バリュエーション
2026年5月22日時点の時価総額は約29億円(株価892円)で、2025/6期実績売上高20億円に対するPSRは約1.4倍と相対的に低い水準にある。PERは予想191倍(2026/6期予想EPS4.67円ベース)と高く見えるが、これは現在の業績低下局面を反映したものであり、2024/6期の正常化利益(EPS59.3円)ベースでは約15倍と解釈できる。PBRは2.22倍(純資産約13.3億円)で、グロース株として一定のプレミアムが付与されている。
自己資本比率は62.9%(2026年3月末)と財務健全性は高く、実質無借金経営に近い(有利子負債3億円程度、現金10億円以上)。ROEは2.3%(2025/6期)と低迷しており、ブロックチェーン等への先行投資フェーズが続く中、収益性の回復が株価再評価の鍵となる。会社は通期業績予想を非開示としており、BI事業の費用規模が確定次第で業績見通しが大きく変わる不確実性がある。
バリュエーション面では、収益多様化・M&A戦略・新事業への期待値を込めた評価となっているが、アフィリエイト事業の競争環境変化やプラットフォームリスクの顕在化があれば株価への下方圧力となりうる。配当利回りは約1.1%(年間10円)で、配当性向が高く自社株買い(2025年度4,657万円実施)も行っているが、収益改善なしに継続は困難な水準である。