事業モデル
アズパートナーズは「世代を超えた暮らし提案型企業」を使命として、シニア事業と不動産事業の二本柱で事業を展開する。シニア事業(2026年3月期売上比76%、売上高154.6億円)は、介護付きホーム(介護付有料老人ホーム)の運営を中核とし、デイサービス・ショートステイも展開する。
介護付きホームは介護保険法に基づく「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設であり、月額30万円台中心の中高所得者向け価格帯設定が特徴。首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)を中心に2025年3月末時点で介護付きホーム29事業所、デイサービス17事業所、ショートステイ4事業所を展開し、国道16号線内側を軸としたドミナント戦略によって採用力・入居率の向上と経営効率化を実現している。
不動産事業(売上比24%、売上高83.3億円)は、シニア開発事業(介護付きホームの自社開発・売却)、ソリューション事業(老朽不動産の再生・土地売却)、収益不動産事業(マンション等の賃貸)の3本柱で構成され、シニア事業の運営ノウハウと不動産専門知識を融合させた独自モデルを持つ。収益面ではシニア事業の安定的な介護報酬収入に加え、不動産売却による一時的な大型収益も組み合わせた複合型収益構造を有している。
KPI
最重要KPIは介護付きホームの稼働率であり、2026年3月期における開設2年以上の既存施設の期中平均稼働率は94.6%(全体89.6%)と高水準を維持し、3月末時点では既存施設94.2%に達した。デイサービスの期中平均稼働率は85.9%、ショートステイは104.4%といずれも高稼働である。財務面のKPIとして、2026年3月期は売上高236.6億円(前期比+32.1%)、営業利益15.2億円(同+16.8%)、経常利益16.2億円(同+19.7%)、当期純利益11.8億円(同+23.8%)と全指標で過去最高を更新した。
EPSは330.7円でPER5.82倍(2026年5月時点)と低バリュエーションにある。ROE22.91%・ROA4.86%と収益性は高く、自己資本比率は21.2%と前期比1.8ポイント改善中。新規開設指標として各事業年度に介護付きホームを数棟開設(26年3月期は4棟)し、開設後1.5〜2年で稼働率95%達成を目標とするステージアップモデルが評価される。
不動産事業では案件ごとの販売件数と利益率(2026年3月期セグメント利益率23.8%)が重要指標となる。
成長ドライバー
第一の成長ドライバーは日本の超高齢社会に伴う介護サービス需要の構造的拡大であり、特に首都圏では高齢者単独世帯・認知症高齢者の増加により介護付きホームへの需要は中長期的に堅調な拡大が見込まれる。第二は「EGAO link」によるテクノロジー活用で、パラマウントベッド・アイホン等と共同開発したIoT/ICTプラットフォームにより業務効率化と介護人材不足への対応を実現し、高稼働率維持と差別化サービス(夢を叶えるプロジェクト等の個別ケア)を可能にしている。第三はシニア開発事業の拡大で、自社で土地を仕入れ介護付きホームを建設し、ヘルスケアリート等への売却で大きなキャッシュフローを生み出す「建てて売るモデル」が2026年3月期の不動産事業売上高を前期比91.4%増の83.3億円に押し上げた。
第四は連続増配による株主還元力の向上で、2027年3月期の配当予想80円は4年連続での最高益更新と相まって投資家注目度を高めている。第五は介護報酬の改善トレンドで、2024年4月の+1.59%改定に続き、人件費・物価高騰への対応として介護付きホームは家賃・管理費の値上げも実施し収益性を維持している。
リスク
最大のリスクは介護保険制度依存性で、介護報酬が3年ごとの改定により引き下げられた場合や給付範囲が縮小された場合に収益が圧迫される。2024年の改定はプラス改定だったが、今後の財政制約から不利な改定リスクは常在する。第二は人材確保リスクで、生産年齢人口減少下での介護人材不足は業界共通課題であり、人員配置基準を満たせなければ指定取消しにつながりうる(発生可能性:中、影響度:中)。
第三は新リース会計基準(2028年3月期適用)によるオンバランス化リスクで、多くの施設を土地・建物賃借で運営しているため、バランスシートの大幅膨張と自己資本比率の低下が見込まれ(発生可能性:高、影響度:大)、財務指標に重大な影響を与える可能性がある。第四は有利子負債の高水準リスクで、2026年3月期末の有利子負債は101億円(有利子負債依存度43.5%)に達しており、金利上昇局面では支払利息増加が利益を圧迫する。第五は不動産事業の収益変動性で、物件販売のタイミングにより四半期・年度業績が大きく振れる特性があり、市況悪化・在庫滞留リスクも伴う。
第六は首都圏集中リスクで、自然災害(大地震等)による事業所被害が業績に甚大な影響を及ぼしうる(発生可能性:低、影響度:大)。
競合
介護付きホーム市場における主な競合は、SOMPOホールディングス傘下のSOMPOケア(約2.8万室)、ニチイ学館、メッセージ(ベネッセスタイルケア)、ツクイ、チャームケア等の大手介護事業者である。アズパートナーズは室数規模では大手に劣るが、IoT/ICT「EGAO link」を活用したデジタルトランスフォーメーションによる業務効率化と個別ケア品質向上を競争優位として打ち出している点が差別化要因。
また首都圏ドミナント戦略により採用・営業の効率化と施設知名度向上を実現し、既存施設稼働率94%以上という高水準を維持している。介護付きホームは総量規制(都道府県・市区町村の介護保険事業計画に基づく定員数上限)によって参入障壁が高く、新規参入には自治体公募で選定を受ける必要があるため、既存運営実績の蓄積が優位性となる。
中高所得者向け価格帯設定(月払い方式で37万円前後)は一般型の低価格帯施設との棲み分けを可能にし、サービス品質重視層への訴求が高稼働率に寄与している。不動産事業においてはシニア介護施設の運営ノウハウを土地選定・建物仕様に活かせる点がデベロッパーとの差別化につながっている。
バリュエーション
2026年5月時点の時価総額は約76億円、株価2,120円。会社予想EPSは364.33円でPER予想5.82倍、PBR1.47倍、予想配当利回り3.77%(配当80円)という水準は、同セクターの介護関連企業や東証スタンダード市場平均と比べて割安感がある。2025年〜2026年のPER推移は4.69〜10.93倍と幅があり、直近の過去最高益連続更新・増配トレンドを踏まえると現在の低PERは成長性対比で見直し余地がある。
ROE22.91%・ROE予想25.29%という高収益性は持続的な内部価値創造力を示す一方、自己資本比率21.2%と有利子負債依存度43.5%(2026年3月期)は財務レバレッジが効いた構造であることを示す。2028年3月期に予定される新リース会計基準の適用後はバランスシートの大幅膨張が見込まれ、PBR・自己資本比率等の財務指標に影響する点は投資判断上の注意材料。売上高は2027年3月期予想279億円(前期比+18.1%)、営業利益予想16.8億円(同+10.0%)と安定成長軌道にあり、シニア開発事業の好調持続と介護施設稼働率の着実な向上が業績拡大の主軸となっている。
大株主の株式会社ブレス(代表植村氏関連)が発行済株式の約39.5%を保有する集中構造は流動性の低さと意思決定集中リスクを内包する。