事業モデル

タスキホールディングスは、2024年4月に株式会社タスキと株式会社新日本建物が株式移転により経営統合して設立された純粋持株会社であり、ミッションに「人を起点に。空間をデジタルに。未来を変える仕組みをつくる。」を掲げる不動産テック企業グループである。

主力事業はLife Platform事業で、東京23区を中心に室内設備にIoT対応設備を標準装備した新築投資用IoTレジデンスの企画・開発・販売を行っている。株式会社タスキが提供する「タスキsmart」シリーズ(RC造8〜14戸の中低層コンパクトレジデンス)と、株式会社新日本建物が提供する「ルネサンスコート」シリーズ(RC造10〜50戸の中高層レジデンス)という2系統のブランドを持ち、エリア内で異なるサイズ・仕様の物件を開発することで市場ニーズを幅広くカバーしている。また、中古物件を取得してバリューアップのうえ売却するリファイニング事業、東京近郊の物流施設の企画・販売、不動産オーナー向け資産コンサルティング(株式会社オーラ)、不動産クラウドファンディング「TASUKI FUNDS」の運営なども手がける。Finance Consulting事業では、連結子会社の株式会社タスキプロスが中小不動産事業者向けの不動産担保ローンを提供し、グループのデベロッパーノウハウを活かした柔軟な与信審査を強みとしている。

非連結子会社の株式会社ZISEDAIが不動産業界向けDXプロダクト(SaaS)を開発・販売しており、中長期的な収益多様化の軸として育成中である。売上高はFY2024の475億円からFY2025に744億円(+56.8%増)、FY2026通期予想は1,005億円(+35%増)と急成長軌道にあり、2033年9月期には売上高2,000億円を目指す長期ビジョン「BEYOND2033」を掲げている。

KPI

タスキホールディングスが中期経営計画において採用する主要KPIは3つで、①Life Platform事業の棚卸資産残高、②SaaS事業のプロダクト導入企業数、③EBITDA成長率である。FY2026 2Q(2025年10月〜2026年3月)累計では棚卸資産残高が前期末比60.9%増と過去最高を更新し、通期売上高1,005億円達成の蓋然性を高めている。財務KPIとしては1株当たり当期純利益(EPS)・ROE・自己資本比率を重視しており、中期経営計画最終年度(FY2027.9)においてEPS140円の達成を重点課題に掲げている。

FY2025のEPSは90.99円、FY2026通期予想は93.97円となっており、2027年目標に向け着実に積み上がっている。収益性指標では営業利益率がFY2024の8.6%からFY2025に11.9%へ大幅改善し、FY2026 2Q累計でも11.8%を維持している。自己資本比率はFY2025末38.4%であったが、積極的な棚卸資産積み上げと借入増加によりFY2026 2Q末には29.9%に低下しており、財務レバレッジ上昇が一つの注目点となっている。

ROEはFY2025実績15.5%、FY2026通期予想18.2%と高水準が続く見通しである。配当は累進配当方針を採用し、FY2025の36円からFY2026予想では40円と増配を継続しており、配当利回りは予想ベースで4.25%(2026年5月29日時点)に達している。EBITDAはFY2025に91億円(前年比+66%)と急増しており、中期計画目標の年率40%成長を上回るペースで拡大している。

成長ドライバー

タスキホールディングスの成長ドライバーは複数の構造的要因によって支えられている。第一に、東京23区における投資用不動産市場の堅調さである。東京都の人口増加トレンドと円安基調の継続により国内外投資家の購入意欲は旺盛で、賃貸マンション・アパートの賃料上昇が投資用一棟マンション価格の上昇を後押ししており、FY2026 2Q累計では前年同期比28.4%増の売上高430億9,000万円を達成した。第二の成長ドライバーは、アクイジション(用地仕入)スタッフの増員による仕入能力の拡大である。

FY2025において従業員数は前期比39名増の147名となり、仕入体制強化により棚卸資産残高が過去最高を更新し続けている。第三に、オフバランス型不動産ファンドの活用によるバランスシートの効率化が成長を加速させている。グループ初の開発型オフバランスファンドを組成するなど、資産を圧縮しながら売上規模を拡大する仕組みを整備中である。第四として、M&A・CVC投資を通じたエコシステム拡大がある。

CVC「TASUKI VENTURES」経由でベンチャー企業への出資・事業提携を推進しており、2026年4月にはAI×デジタルマーケティング領域の株式会社FUNDiTと資本業務提携を締結し、顧客獲得・LTV最大化に向けたプラットフォーム構築を進めている。第五に、非連結子会社のSaaS事業(ZISEDAI)が2025年6月に営業AIエージェント機能を追加するなどプロダクト強化を続けており、2033年時点での導入企業数1,500社目標に向け先行投資段階にある。またFY2026よりAI Dynamics事業を新設セグメントとして位置付けており、AIソリューション領域での新たな収益軸の確立を目指している。

リスク

タスキホールディングスが直面する主要リスクは有価証券報告書に詳細に記載されており、複数の重大リスクが存在する。最大のリスクは不動産市況の悪化であり、景気動向・金利動向・地価動向・建設価格動向の影響を受けやすい(発生可能性:中、影響度:大)。日銀の政策金利引上げ観測が継続するなか、支払利息増加による収益圧迫リスクは現実的な懸念事項であり、FY2025末時点の有利子負債残高470億円(有利子負債比率147%)に加え、FY2026 2Q末には長期借入金が前期末比186億6,200万円増加してさらに積み上がっている。第二に、資金調達リスクが中程度の発生可能性・大きな影響度として挙げられており、物件取得・建築工事費を金融機関借入に依存する構造から、信用力低下時の調達制約リスクがある。

第三に、東京23区への事業集中リスクがある。主要プロジェクトエリアが東京23区に集中しているため、地震等の大規模災害や当該エリアの需給悪化の影響を直接受けやすい。第四に、収益認識の期ずれリスクがある。物件の引渡し完了時点に収益認識するため、竣工時期の変更や施工遅延により期中の業績変動が大きくなる可能性がある。

第五に、外注委託リスクがある。設計・施工を外部委託しているため、外部委託先の経営不振や繁忙期の対応遅れによる工期遅延・資材価格急騰時の外注価格上昇リスクが高い(発生可能性:高)。その他、M&Aによるのれん減損リスク、SaaS事業への先行投資による利益率低下リスク、個人情報管理リスク、人員確保リスクも有報に明示されている。

競合

タスキホールディングスの競合環境は、東京23区を中心とした投資用不動産マーケットにおいて大小様々な事業者が存在するが、IoT標準装備という差別化軸は現時点では比較的明確なポジションを形成している。有価証券報告書では競合リスクの発生可能性を「低」(影響度:大)と自己評価しており、現時点では競争優位を維持できていると認識されている。EDINET DBの同業比較データによれば、FY2025の営業利益率11.8%は三井不動産8801(14.2%)・三菱地所8802(19.6%)には及ばないが、飯田グループ(5.5%)や業界中央値(7.7%)を大幅に上回っており、規模の小ささを収益性でカバーしている。

ROEは18.5%と三井不動産(8.0%)・三菱地所(7.6%)をはるかに超え、大型デベロッパーより資本効率が高い。直近の競合として規模・ポジションが近い株式会社オープンハウスグループ3288(売上1.3兆円、ROE20.1%、OI率10.9%)は首都圏で強い競争力を持つが、タスキは投資用マンション・法人顧客に特化しており直接競合は限定的である。中古物件のリファイニング事業ではアセットマネジメント企業との競合もあるが、グループ内の一級建築士・施工管理技士ノウハウを活かした独自モデルで差別化を図っている。

今後はSaaS事業(不動産DX領域)において専業SaaSベンダーとの競合が予想されるが、現時点では自社デベロッパーの実務ノウハウを組み込んだプロダクトという差別化を訴求している。Finance Consulting事業では中小不動産事業者向けに特化した不動産担保ローンを提供しており、一般金融機関が対応しにくい審査案件で独自のニッチポジションを構築している。

バリュエーション

2026年5月29日時点の時価総額は581億円(株価942円)であり、PER(予想)は10.02倍、PBR1.83倍、配当利回り予想4.25%(40円/株)という水準にある。予想EPS93.97円に対してPER10倍は日本株の一般的なPER中央値(約14倍)を大きく下回っており、バリュエーション上の割安感が目立つ。EV/EBITDAは7.2倍(FY2025実績ベース)と、不動産デベロッパーとして良好な水準である。

成長性については売上CAGR(3年)が概ね45%超のハイグロース銘柄であり、PEGレシオ(PER/EPS成長率)は0.2倍前後と極めて低く、成長株としてのバリュエーション魅力がある。一方でリスク要因として、①FCFがマイナス(FY2025実績:-75億円)で営業CFも-58億円とキャッシュ創出が弱く、財務活動(借入・増資)で資金を賄う構造であること、②Altman Z-Score2.71と注意圏にあること、③Sloan Accrual15.01%と利益の質に一定の留意が必要なことが挙げられる。中期経営計画では2027年9月期のEPS140円が重点KPIとされており、FY2026予想の93.97円から達成には年率+22%程度のEPS成長が必要で、現状の業績進捗から達成可能性は相応に高いと評価できる。

棚卸資産の大幅積み上げ(FY2026 2Q末で前期末比60.9%増と過去最高更新)が後半の収益計上に直結するため、下半期の業績への注目度が高い。長期ビジョン2033年・売上高2,000億円達成の有無がバリュエーション拡大の鍵を握っており、グロース銘柄としての再評価余地が残されている。