事業モデル

安藤・間(安藤ハザマ、証券コード1719)は、2013年に安藤建設と間組が合併して誕生した準大手総合建設会社(ゼネコン)であり、土木・建築・開発の三事業を柱に据えている。土木事業では特にトンネル掘削技術に強みを有し、リニア中央新幹線の品川駅新設工事(非開削工区)や霞ヶ浦導水事業など国家的インフラ工事を多数受注している。建築事業ではオフィス・物流施設・病院・学校などの新築・改修工事を手掛け、ZEB・ZEH対応の省エネ建築設計能力も備える。

開発事業では不動産開発や分譲事業も展開する。売上高の大部分(85〜90%程度)は売上原価(外注費・材料費含む)であり、請負型ビジネスが主体であるため受注残の積み上がりが収益の先行指標となる。2026年3月期の売上高は4,396億円と過去最高水準に達しており、国内建設需要の旺盛さを背景に着実な成長を続けている。

海外事業ではネパール・シンズリ道路など開発途上国のインフラ整備にも参画しており、ODA案件を含む形でのグローバル展開を少規模ながら進めている。

KPI

安藤・間の重要KPIとして第一に挙げられるのは売上高と受注残高であり、2026年3月期の売上高は4,396億円(前期比+3.4%)と増収基調を維持している。2027年3月期の会社予想売上高は4,900億円(+11.5%)と更なる拡大を見込んでいる。営業利益率は、資材費高騰を背景に一時的に低下した2023〜2024年度(4.7〜5.3%)から大幅に回復し、2026年3月期は7.65%と2010年代後半の高水準に近づいている。

ROEは2026年3月期で14.28%(予:10.66%)、ROAは7.23%(予:5.39%)と自己資本の効率活用が進んでいる。配当は2026年3月期に1株80円(配当性向42.2%)を支払い、2027年3月期は84円(5%増配)を予定しており、2014年の5円から10年超で16倍以上に拡大している。自己資本比率は2026年3月期に50.6%と初めて50%を超え、財務健全性が顕著に改善している。

中期経営計画2028では、2028年3月期の経常利益目標を公表しており、外部環境の変化に対応した事業ポートフォリオの最適化が評価指標となっている。有利子負債は275億円(有利子負債比率13.21%)と低水準に抑制されており、財務的な安全余力が十分確保されている。

成長ドライバー

安藤・間の成長ドライバーとして、まず国内建設需要の長期的旺盛さが挙げられる。リニア中央新幹線、高速道路リニューアル、国土強靭化計画、東京都内再開発(虎ノ門・麻布台地区等)など大規模公共・民間投資が継続しており、同社の受注環境は極めて良好な状態が続いている。

第二の成長ドライバーはトンネル技術という競争優位性の活用であり、同社は山岳トンネル・海底トンネル・シールドトンネルに対応できる総合的なトンネル技術を保有し、リニア中央新幹線品川駅などの難易度の高い工事で実績を積んでいる。第三に、2026年3月に発表した「中期経営計画2028」(2026年度〜2028年度)において、M&A戦略の積極活用を新たに明記し、自社の強みをさらに強化するための買収・提携を推進する方針を打ち出した点が挙げられる。

第四に、政策保有株の段階的売却による資本効率改善が進んでおり、2026年3月期には売却益の計上により純利益が前期比12.5%増の297億円に達した。第五に、ZEB・ZEH対応建築やCPコンクリート(CO₂固定コンクリート)など脱炭素対応技術の開発が進み、ESG対応の観点から発注者企業との関係強化が見込まれる。

リスク

安藤・間が直面する主要リスクとして、まず大型工事での採算悪化リスクが挙げられる。建設業の収益は個別工事の採算性に大きく左右されるため、工期の遅延・資材費の急騰・設計変更等が生じた場合に大きな損失が発生しうる。実際に2022〜2024年度にかけて資材費高騰と人件費上昇の影響で営業利益率が4.7〜5.3%まで低下した経験がある。第二に、資材費および労務費のさらなる上昇リスクがある。

鉄鋼・コンクリート・木材等の建設資材価格と職人・技術者の人件費は上昇傾向にあり、固定価格での受注工事の採算を圧迫する可能性がある。第三に、技能工・技術者の人材不足リスクがあり、建設業界全体で熟練工の高齢化・後継者不足が深刻化している。第四に、公共工事依存に伴う政策変動リスクがある。国土強靭化計画等の予算動向や政権交代により受注環境が変化する可能性がある。

第五に、海外事業での政治・カントリーリスクがある。特に東南アジア・南アジアでの工事では現地の政情不安や通貨変動が収益に影響しうる。第六に、法規制・許認可リスクとして、建設業は建設業法・労働基準法・安全衛生法等の法規制に基づいて事業を行っており、規制強化や違反による業許可停止リスクも存在する。

競合

安藤・間は国内建設業において「準大手ゼネコン」に分類される。大手ゼネコン4社(鹿島・大成建設1801清水建設1803大林組1802)と比較するとやや規模が小さいものの、特定分野では差別化が図られている。特にトンネル・土木分野では、五洋建設1893西松建設1820・飛島建設などと競合しつつも、同社の山岳トンネル技術は業界内で高評価を受けている。

建築分野では竹中工務店・戸田建設1860・前田建設工業・長谷工コーポレーション1808などと競合する。株探では比較銘柄として大林組(1802)・鹿島(1812)・飛島HD(1805)が挙げられており、時価総額では大手に及ばないが、PBR 1.32倍・PER 12.35倍・配当利回り4.81%と株主還元の観点では競争力のある水準を維持している。売上高約4,400億円規模の同社は、西松建設・前田建設などと同水準の準大手ポジションにある。

中期経営計画2028において「ビジネスパートナー価値の創造」を新たな価値創造軸に加え、サプライチェーン全体との協調を通じた差別化戦略を推進している点が特徴的で、他の準大手との差別化ポイントとなっている。

バリュエーション

2026年6月時点の安藤・間の株価は1,747円(時価総額3,162億円)であり、PER 12.35倍・PBR 1.32倍・配当利回り4.81%という水準にある。PERについては2027年3月期会社予想EPS(141.51円)を基にした予想PERでは12.35倍と、建設業界の平均的なPER水準(概ね8〜15倍)に収まっており、特段割高でも割安でもない中立的な水準である。PBRは1.32倍と1倍を超えており、解散価値以上の評価を受けているが、大手ゼネコンと比較すると控えめな評価にとどまっている。

配当利回りは4.81%と高く、2027年3月期の予定配当84円を維持すれば5%超の利回りも視野に入る水準であり、インカム投資家にとって魅力的な水準にある。自己資本比率が50.6%まで改善し財務安定性が高まっているほか、BPS(1株純資産)が1,327.5円と着実に成長しており、ROE 14.28%(当期)は建設業内でも高水準である。一方、2027年3月期は純利益が222億円(前期比-25%)と減益予想であることから、政策保有株売却益という一時的要因を除いた実力ベースでは利益水準の見極めが必要である。

中期経営計画2028の目標達成が株価再評価のトリガーとなる可能性がある。