事業モデル

ミライト・ワンは、2022年7月に旧ミライト・ホールディングス・ミライト・ミライト・テクノロジーズの3社合併により誕生した総合エンジニアリング&サービス会社である。事業の根幹は、NTTグループをはじめとする通信キャリア向けの通信インフラ設備(固定系・モバイル系)の構築・保守であり、設備工事から設計・監理・運用保守まで一貫したサービスを提供している。売上高は2025年3月期に5,786億円を達成し、2026年3月期は6,200億円を計画するなど継続的な規模拡大を続けている。

近年は従来の通信インフラ工事に加え、企業のDX支援(SI事業)、グリーンエネルギー・再生可能エネルギー事業、スマートシティ・里づくり事業、さらには海外(アジア・オセアニア)のデータセンター関連・インフラシェア事業に経営資源を集中させ、『みらいドメイン』として戦略的成長分野と位置づけている。国内では2023年12月に国際航業(地理空間情報)を子会社化し、測量・GIS・デジタルツイン領域にも事業を拡大した。グループ会社に㈱ミライト・ワン・システムズ(SI事業)、㈱ソルコム(電力・通信設備)、㈱TTK(電気通信設備)等を抱え、フルバリュー型モデルへの転換を推進している。

有利子負債は2025年3月期末で1,131億円(有利子負債比率43.25%)と増加傾向にあるが、これはM&Aに伴う負債活用によるものであり、外部格付A格の維持を前提とした資本政策を継続している。

KPI

最重要KPIは売上高とみらいドメイン比率であり、2026年3月期中計目標として売上高7,200億円・みらいドメイン比率45%以上を掲げている(計画値は売上高6,200億円・43%)。EBITDA率については目標8.5%に対し計画7.7%(2026年3月期)と改善余地がある。2025年3月期実績の営業利益率は4.84%(前期比+1.40%pp)と改善傾向にあり、2026年3月期予想では5.48%まで向上する見込みである。

ROEは2021年3月期のピーク10.69%から低下し、2025年3月期に6.57%・2026年3月期予想で7.98%と回復基調にある。EPSは2025年3月期189.4円、2026年3月期予想229.95円(前年比+21.4%)と大幅成長が見込まれる。一株配当は2025年3月期75円・2026年3月期予想85円(配当利回り予想2.33%)と安定的な増配を継続しており、総還元性向50〜70%をターゲットとする株主還元方針を掲げている。

フリーキャッシュフローは2025年3月期に86.8億円のプラスに回復し、財務安定性も改善している。自己資本比率は48.6%と国内建設業平均を上回る財務健全性を維持している。

成長ドライバー

第一の成長ドライバーは、5G・次世代通信インフラへの設備投資需要の継続と増加である。NTTグループや各通信キャリアは光通信9435・5G展開・IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)への投資を拡大しており、ミライト・ワンはその主要施工・設計パートナーとして安定受注基盤を持つ。第二はみらいドメインへのシフトであり、企業DX支援(クラウド移行・SI)、グリーンエネルギー(太陽光・風力設備構築・保守)、スマートシティ(街づくり・里づくり)等の高付加価値領域の比率を2026年3月期に43%まで高める計画である。

第三は国際航業買収によるGIS・地理空間情報・デジタルツイン事業の強化であり、インフラ点検のDXや国土強靭化分野での新たな収益機会が生まれている。第四はアジア・オセアニアでのグローバル展開であり、シンガポールのLantrovision(2016年買収)を核にデータセンター関連工事・インフラシェア事業を拡大している。第五はデータセンター建設需要の急増で、国内外のAI・クラウド投資に伴うデータセンター関連工事の受注増が見込まれる。

2026年3月期第3四半期(4〜12月累計)の経常利益は前年同期比53.4%増の190億円と強い成長トレンドを示している。

リスク

最大のリスクは特定取引先(NTTグループをはじめとする通信事業各社)への高い依存度であり、通信キャリアの設備投資計画の見直しや技術革新が直接的に業績に影響する。実際、2023年3月期・2024年3月期は営業利益が218億円・178億円と大幅に落ち込んだが、その主因はNTTグループの工事単価見直しや設備投資計画の変化であった。第二に、建設コスト(資機材・人件費・エネルギー費)の上昇リスクがあり、受注済み工事の採算性悪化につながる可能性がある。

第三にM&Aリスクがあり、国際航業の統合・シナジー実現が遅れた場合にのれん減損やのれん償却負担が生じるリスクがある(有利子負債は2024年3月期末1,062億円から1,131億円に増加中)。第四は法規制リスクであり、建設業法・電気通信事業法・電波法等の規制変更が事業活動に影響を与える可能性がある。第五は海外事業リスクで、アジア・オセアニア諸国の政治情勢・為替・法規制変動が収益に影響する。

第六は技術革新リスクで、通信インフラの自動化・省力化が進む場合、従来の施工・設計業務の縮小につながる可能性がある。また気候変動への対応(TCFDへの賛同)も経営課題として認識されており、サプライチェーン全体での対応が求められている。

競合

国内の電気通信工事・インフラエンジニアリング市場においてミライト・ワンは業界最大規模の企業であり、売上高5,786億円(2025年3月期)は同業他社を大きく上回る。主な競合は、コムシスホールディングス1721(2025年3月期売上高約4,500億円)、きんでん(関西電力9503系)、エクシオグループ1951(旧コムシス)、東電工業(東京電力グループ)等の大手電気通信・電設会社である。

ミライト・ワンの競争優位性は、NTTグループとの長年にわたる協業関係に基づく安定受注基盤、全国規模の施工ネットワーク、M&Aにより蓄積した多様な技術力(通信・電設・ICT・地理空間情報)にある。一方でコムシスホールディングスやエクシオグループもDXや環境エネルギー分野に積極進出しており、差別化競争が激化している。

海外市場ではLantrovisionを通じてアジア諸国のシステムインテグレーション・ネットワーク構築分野に参入しており、地域密着型の現地競合と戦っている。SBI証券は2026年4月に「買い」・目標株価5,400円で新規カバレッジを開始しており、業界の成長性とミライト・ワンのポジションを高く評価している。

バリュエーション

2026年4月8日時点の株価3,650円、時価総額3,333億円に対し、PER予想15.41倍(EPS予想229.95円)、PBR1.23倍(BPS2,967.39円)、配当利回り予想2.33%(1株配当85円)という水準である。過去のPERレンジは1.28〜33.4倍(2011〜2025年)であり、現在は割高でも割安でもない適正水準圏に位置している。ROE予想7.98%に対しPBR1.23倍は、ROEとPBRの均衡水準(ROE≒PBR×資本コスト)を考慮すると資本コスト8〜10%前後を意識した水準とも解釈できる。

2026年3月期に向けて営業利益+21.5%・EPS+21.4%の大幅成長予想が実現すれば、ROE目標10%以上(Vision 2030)達成に向けた評価見直し余地がある。同社は総還元性向50〜70%を方針とし、2025年3月期は68.6%の水準を達成しているため株主還元の観点からも一定の評価が可能である。PBRが1倍を超え「資本コストを意識した経営」への移行が市場に認識されているものの、有利子負債増加(42〜43%)による財務レバレッジリスクと、みらいドメイン比率の向上による利益率改善の実現可否が中期的な株価上昇の鍵となる。

2026年3月期の次回決算(2026年5月12日予定)での通期業績および2027年3月期以降の中期計画進捗が重要な評価イベントとなる。